2017年6月2日金曜日

浦山桐郎「キューポラのある街」

NHK朝のドラマ「ひよっこ」でトランジスタラジオをつくっている。
集団就職で上京した若い女性たちが流れ作業で電子部品を組み立てている。
昼休みにはコーラスを楽しんでいる。
関川夏央の『昭和が明るかった頃』を読みはじめた。
「キューポラのある街」が観たくなった。
早船ちよの原作を今村昌平と浦山桐郎が脚本化した。浦山の監督デビュー作である。
助監督から監督に昇格する際最初の作品は2本立て興行の一本、SPと当時呼ばれた一時間程度の作品を撮らせるというが、この映画は例外的に100分ある。
関川夏央の本にそのエピソードが描かれている。
高度経済成長がはじまろうとしている。
子どもたちは「所得倍増」を口にする。
とはいうものの、鋳物の街は貧困の中にある。
鋳物工場を解雇されたジュンの父親が再就職してさっさと以前のように働きさえすればこのドラマは生まれなかっただろう。
ジュンは修学旅行にも行けただろうし、志望校へも進学できたはずだ。
労働者ではなく職人だという父親の矜持と弱さがすべての引き金となっている(もちろんの背景となる時代や社会がいちばん大きな鍵をにぎっている)が、そこから生じるさまざまな挫折を乗り越え、新しい未来を創り出していくところにこの映画の普遍的な価値がある。

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