2017年1月24日火曜日

山本薩夫「皇帝のいない八月」

戦後30年以上経た1978年。僕は大学生になった。
大学には平和憲法を守るんだと声を上げる若者たちが多くいた。
寝台特急さくらをジャックするクーデター。憲法を改正し、ふるきよき美しい日本を取り戻そうと行動を起こす元自衛隊員がいる。
元自衛隊員の妻は吉永小百合。彼女とかつて将来を誓い合った雑誌記者が山本圭。
複雑な人間関係がひとつの列車に乗り合わせる。
三國連太郎、丹波哲郎、佐分利伸、大地喜和子、高橋悦史、さらには岡田嘉子に渥美清とキャストも豪華な作品だ。
ラストシーン。銀座の歩行者天国を闊歩する若者たち。平和を当たり前のことのように思っていた自分が映っているようだ。

2017年1月23日月曜日

野村芳太郎「ゼロの焦点」

ごく普通の(仮にそんなものがあるとすればだが)殺人事件が松本清張の眼鏡を通して見ると複雑な様相を呈してくる。
人を殺す動機は、憎しみでも恨みでも金銭トラブルでもなく、消し去りたい暗い過去なのだ。
それでもってやっかいなのは誰もが好きで暗い過去を引きずって生きているわけではないということだ。
松本清張の想像力はそんな人間の本質のど真ん中を抉っていく。

2017年1月4日水曜日

マイク・ニコルズ「卒業」

もう何度か観ている映画なのに、ちゃんと観た感じがしない。
どことなく浮ついた青春映画だからだろうか、あるいは観るものをして浮ついた気持ちにさせてしまうからだろうか。
明日から仕事という正月休みの最後に観たせいもあるかもしれない。この映画を観るときはいつも浮ついて観ていたのかもしれない。
それにしても強引というか豪快なストーリーだ。青春映画ってやつはこういうことでいいんだという勢いすら感じさせる破天荒な名作だ。

2017年1月2日月曜日

ロバート・ゼメキス「バック・トゥ・ザ・フューチャー」

大晦日から元旦にかけて、あまり映画を観ない僕が一年かけて観るくらいの映画をNHKBSで放映していた。
とりわけ深夜の「ゴッド・ファーザー」はたて続けに三本観たかったけれどあまりに深夜過ぎた。
元旦の午後、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を観る。細かい時代考証がよくなされている秀作だ。タイムスリップものやタイムトラベラーものは突きつめれば突きつめるほど矛盾をかかえるので難しいはずなのに。
ただ今観てみると起点となる1985も1955も同じように「昔」に思えてしまうのがかなしい。